インドが原産地とされ、約5000年前からインドの伝統医学であるアーユルヴェーダでメディカルハーブとして用いられてきた歴史をもつ「モリンガ」。栄養素が豊富に含まれていることから日本でも注目を集め、約10年ほど前から日本で流通している。

脱炭素に向けた動きが活発になる中で、モリンガは二酸化炭素(CO2)の吸収量が他の植物と比べて多いことで食品業界や健康志向の方から再注目を集めつつある。大阪にあるサステナブルなレストラン「BELLA PORTO」でも自社農園でモリンガを栽培してドリンクに使っているとのことだ。

そんなモリンガの効能や環境への影響、今後の可能性について、モリンガ第一人者の1人である株式会社Nature’s Chest Japan(以下「NCJ」)の稲端麻美子さんに話を伺った。

1. モリンガとは?

モリンガはワサビノキという樹木の一種で、インド北部が原産地だ。日本ではお茶や葉の粉末が流通しているが、欧米では一般的に栄養素を補うためのサプリメントとして販売されている。世界で流通しているモリンガの商品は素材の約8割がインドから供給されており、残りはタイやフィリピン、アフリカ諸国で生産されている。

モリンガは生命力が強く、年間降水量が250mm以上、高度は海抜1000m程度までなら育つといわれている。また、生育に適した気温はおよそ25℃から40℃といわれているが、48℃程度の気温まで耐えられたり、軽い降霜の中でも生き延びたりできるといわれ、幅広い状況下で生育できる。そのため、栽培エリアが拡大しつつあり、日本でも栽培されているのだ。

また、モリンガは葉や実、花、枝、樹皮、根などさまざまな部分を活用することができる。たとえば葉はビタミンA、ビタミンC、カルシウム、カリウム、鉄分、たんぱく質など約90種以上の栄養素と、46種類の抗酸化物質、36種類の抗炎症物質、19種類のアミノ酸、オメガ不飽和脂肪酸が含まれている。何かの栄養素が突出して多いわけではないものの、バランス良く含まれているのが特徴で、スーパーフードとして親しまれている。

豊富な栄養素が含まれていることから、栄養不良や病気で苦しむ発展途上国では、粉ミルクにモリンガの葉の粉末を混ぜて乳児に与えることもある。世界保健機関(WHO)はモリンガを「緑のミルク」として、慢性的な栄養不足に悩む発展途上国でのモリンガの植樹を推奨する。

栄養素が多く含まれ、体に良いと思われる一方、モリンガを摂取すべきでない人もいることに注意したい。骨粗鬆症の人はカルシウムの吸収を悪くする物を控えなくてはならないが、モリンガを摂取することによって、シュウ酸、食物繊維の摂りすぎにつながることが懸念されている。過剰に摂り過ぎるのは避け、薬との飲み合わせはかかりつけの病院に相談する必要がある。

また、モリンガの葉の抽出物を妊娠したマウスに経口投与した際、流産が認められたとの報告を受けて厚生労働省がモリンガに対して注意喚起を行っていることから、妊産婦にはおすすめできないという。

2. 環境への影響

モリンガが他のスーパーフードと大きく違うといえるのが、環境面でのポジティブな影響についてだ。インドのUniversity campus of Aurangabad city in Maharashtraの研究によると、モリンガの樹木1本で年間約117kgのCO2を吸収し、そのCO2量は杉の約14倍(自家用車が約107km走行時・エアコンが468時間運転時のCO2排出量と同程度)だという。その要因の一つは「ジャックと豆の木」のモデルになった木ともいわれるくらい、モリンガの成長が早いことだ。モリンガの葉は収穫しても1ヶ月~1ヶ月半も経てば元通りに生えてくるため、1年間に10回ほど収穫することができ、早く成長するために、必要なCO2量も大きいと考えられる。

3. モリンガの活用方法

モリンガの葉

モリンガは現在、葉を粉末状にしたものをスムージーに入れたり、サプリメントとして摂取したりすることが多いが、粉末だけでなく、さまざまな形で活用できる余地がある。モリンガをどのように活用できるのか、研究段階のものも含め、衣食住に分けて紹介する。

3-1. 衣:モリンガの粉末を練りこんだ服

稲端さんはモリンガを使った服を製造できないか検討しており、布の繊維にモリンガの葉の粉末を練りこむことで、抗菌作用や消臭効果が期待できる。また、肌に優しいといわれているため、服のせいで肌が荒れることを防いでくれそうだ。

布の繊維にモリンガの葉の粉末を練りこんでも布が緑色になることはなく、生成色(ごく淡い灰色がかった黄褐色)になる。モリンガの葉の粉末を練りこみ生成色になった布に着色することもできるため、色やデザインを選ばずに服を作ることができる。

3-2. 食:粉末を摂取するだけでなく、レストランのメニュー開発にも

モリンガの葉は収穫後に劣化するスピードが速く、収穫後すぐに粉末状にして商品化されることが多いという。粉末状にすると元々含まれている栄養素の中でビタミンCだけが失われてしまうが、その他の栄養素は葉をそのまま食べるよりも水分量が減ることで約15倍に濃縮され、効率よく栄養素を摂ることができる。古くからモリンガが栽培されてきた地域では葉を料理に使ったり、モリンガの実をカレーに入れたりして食されているようだ。モリンガの葉は辛味成分が含まれ、人によっては少し辛味を感じることもあるようだ。根はアルカロイドが含まれ、毒性があるものの薬効も認められており、薬効だけを上手く活用できるよう研究が進められている。

モリンガの葉を粉末状にしたものを摂取するのが主流だが、稲端さんが販売するモリンガの葉の粉末は味にほとんどクセがなく食べやすいため、料理に手軽に取り入れられ、簡単にバランスよく栄養素を摂ることができる。実際にレストランのメニューに取り入れられており、稲端さんはモリンガの健康や環境寄与に賛同する東京の飲食店と協力し、PURE MORINGA×東京ジャック企画イベントを控えている。

3-3. 住:浄水作用で水をキレイに

モリンガの種には汚染水を浄化する作用があり、10-15gのモリンガオイルを搾取したカスの脱脂粉末と炭酸カルシウムで、100mlの水を綺麗にでき、脱脂粉末を汚染水に入れると汚染物質と綺麗な水の二層に分かれる(※NCJ調べ)。稲端さんは現在、モリンガを使ってマラウイの水を綺麗にするプロジェクトを現地で立ち上げており、プロジェクトが成功すれば綺麗な水が手に入りにくい現地の人々に対して、手軽に安全な水を届けられるようになるという。

また、モリンガは葉を食べることのできる観葉植物として植えることも。CO2を多く吸収してくれるため、オフィスでカーボンニュートラルを象徴する植物としても活躍できそうだ。

PURE MORINGAマーク

PURE MORINGAマーク

4. 期待が高まるモリンガのこれから

研究途上にあり、分からない点もまだまだ多いモリンガだが、栄養素が高いことや環境面でのポジティブな影響があることが判明してきている。そして稲端さんは、国際モリンガ・デー(7月13日)を発足させ、モリンガの可能性をより多くの人に知ってもらうべく活動している。衣食住での活用も含めて国際協力の分野、SDGs達成においても多くの可能性を秘める、モリンガの今後の可能性に期待したい。

【参考文献】本三保子「栄養学の研究者が臨床試験データで解説する『モリンガの実力』」ダイヤモンド社(2019年)
本記事はIDEAS FOR GOOD Business Design Labの転載記事です。

IDEAS FOR GOOD編集部
IDEAS FOR GOOD編集部
IDEAS FOR GOODは、社会をもっとよくするアイデアを集めたウェブマガジンです。世界を大きく変える可能性を秘めた最先端のテクノロジーから、人々の心を動かす広告やデザインにいたるまで、世界中に散らばる素敵なアイデアをあなたに届けます。 https://ideasforgood.jp/
Share
This