持続可能な“未来の食材50”とは?WWF発表の全50種類を紹介&解説

環境課題やアニマルウェルフェアへの意識が世界的に高まるなか、フォアグラやフカヒレなどさまざまな食材の輸入や生産が規制されはじめている。table sourceでも、そうした食材をまとめたコラムは多く読まれている人気記事だ。

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こうした食べられなくなる食材への関心が高まる一方で、“持続可能な食材”にも注目が集まっている。2019年には「WWF UK(世界自然保護基金 英国支部)」が、大手食品ブランド「Knorr(クノール)」と協力し「The Future 50 Foods(未来の食材50)」を発表している。このレポートに掲載されているのは、環境負荷が少なく手ごろな価格で手に入る、栄養価の高い50種類の食材だ。

今回のコラムでは「The Future 50 Foods(未来の食材50)」に掲載されている、全50種類について解説を交えつつ紹介していきたい。
 

藻類 Algae

地球上のすべての酸素生産の半分を担っており、水生生物の生態系に多大な影響を及ぼしている「藻類」。必須脂肪酸が含まれており、抗酸化物質の供給源だ。藻類はタンパク質を豊富に含み「うま味」を含むため、近年では代替肉の原料としても活用されている。日本人にとって馴染み深い海苔やワカメは、肥料や農薬を使用せずに一年中収穫できる

[01]海苔 Laver seaweed

日本料理や韓国料理に欠かせない「海苔」。イギリスのウェールズ地方では、海苔をじっくり煮込んで味付けし、バターを塗った熱いトーストと一緒に食べる伝統的な料理、「laverbread(ラバーブレッド)」の材料として使われている。

[02]ワカメ Wakame seaweed

 

豆類 Beans & Other pulses

食物繊維、タンパク質、ビタミンB群を豊富に含む、「豆類」。豆類の多くは他の作物に比べて少ない水量で栽培することができ、乾燥した土地でも多くの収穫を見込める。栽培の過程で土壌に窒素を取り込むため、豊かな土壌づくりにも貢献している。手頃な値段で手に入ることが多く、さまざまな料理に使用できる多用途性もサステナブルなポイントだ。

[03]小豆(あずき) Adzuki beans

日本では、縄文時代の遺跡から発掘されるほど古くから栽培されている「小豆」。和菓子や赤飯など、日本の食卓に深く根付く食材だが、近年はその多用途性、栄養価の高さ、風味の良さから世界的な人気が高まっている。

[04]黒いんげん豆 Black turtle beans
[05]そら豆 Broad beans (fava beans)

世界中で広く栽培され、食べられている「そら豆」。近年ではプラントベース(植物性)食品の材料として使われることも増えている。
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[06]バンバラ豆 Bambara groundnuts/Bambara beans

「バンバラ豆」は、日本をはじめ世界の多くの地域ではまだ知る人の少ない食材だ。アフリカのバンバラ族に由来し、アフリカでは広く栽培されている。様々な料理に使うことができ、東アフリカでは焙煎して裏ごしし、スープのベースとして使われている。味はピーナッツに似ており、少し甘みがあるという。

[07]ササゲ Cowpeas

アフリカ原産で、現在はラテンアメリカ、東南アジア、米国南部など、世界中の暖かい地域で栽培されている。葉は他の葉物野菜と同じように食べることができ、さやは若いうちは食べることができ、シチューなどに使われる。外皮を取り除いた種は粉にして、揚げ物や蒸し物、焼き菓子に使うことができる。

[08]レンズ豆 Lentils
[09]マラマ豆 Marama beans

アフリカ南部のカラハリ砂漠が原産。人類がアフリカ南部で暮らしていた時代から食べられてきた古代食と考えられている。現在ではオーストラリアやアメリカでも栽培されている。ローストすることでカシューナッツに似た風味になり、炒め物やカレーなどの調理に最適だという。

[10]緑豆 Mung beans

日本では主にもやしの種子として利用されている「緑豆」。世界各地で、麺類、米料理、カレー、炒め物などに使われており、卵のようにスクランブルしたり、ピューレ状にしてアイスクリームのようにして食べることもできる。
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[11]大豆 Soy beans

 

サボテン Cacti

世界中の家庭で観賞用として利用されているサボテンだが、食用として栽培されているサボテンも多い。多肉植物のサボテンは水を蓄える性質があるため、乾燥した地域でも育てることができる。古くからメキシコ料理に使われており、中南米、アフリカ、中東で広く栽培されてきたが、近年はオーストラリアやヨーロッパでも人気の食材となっている。

[12]ノパル Nopales

果実や花、茎から伸びる新芽、オイルに至るまで豊富な栄養が含まれている。ノパルはメキシコ料理でよく使われる食材で、葉や花は生で食べることもできる。ジュースやジャムにして食べられることも多いという。

穀物・穀類 Cereals & Grains

「穀物」「穀類」は何千年もの間、人類の食生活の主要な構成要素であったため、文明を形成する上で重要な役割を担ってきた。レポートでは「白米やトウモロコシ、小麦などの主食から、まだあまり一般的ではない穀物まで、炭水化物の供給源を多様化することで、より多くの栄養価が提供され、土壌の健康が改善される。」と述べられている。

[13]アマランサス Amaranth

ヒユ科の穀物で、細かな黄色の種子は、豊富なマグネシウムとタンパク質を含む。南米ペルー原産で、古代アステカ人にとっては主食であり、儀式にも使用される重要な穀物だったという。マイルドでややナッツのような味わいとゼラチン状の食感があり、スープ、おかず、リゾットに使用される。

[14]ソバ Buckwheat
[15]シコクビエ Finger millet

シコクビエは数千年前から栽培されているイネ科の穀物で現在では乾燥地帯で広く栽培されている。同種の作物よりも虫に対する抵抗力が強いため、農薬に頼らず高い収穫量を得ることができる。

[16]フォニオ Fonio

イネ科の「フォニオ」は、古代エジプトで栽培されていたことが明らかになっており、乾燥に強く、砂地や酸性土壌でも栽培することができる。60~70日で成長し、栽培が簡単なことから「怠け者の農作物」との異名を持つ。砂のように小さな粒のひとつひとつを脱穀・脱皮しなければ食べられないことが欠点だといえるが、近年は今まで手作業で行われてきた脱穀・脱皮作業に代わる世界初のフォニオ ミルが開発されている。

[17]ホラーサーン小麦 Khorasan wheat

世界約40ヵ国で栽培される「ホラーサーン小麦」。人工農薬や肥料を使用せずにさまざまな気候に耐えることができる。通常の小麦の2倍の大きさがあり、調理するとより豊かでクリーミーなナッツのような味わいになるという。

[18]キヌア Quinoa

2000年代初頭からヨーロッパやアメリカで栄養価の高い「スーパーフード」として人気が高まっている。日本でも、白米にキヌアを加えて炊くなど、様々なレシピが紹介されている。

[19]スペルト小麦 Spelt

外皮が厚いので、病気や害虫に強い「スペルト小麦」。まろやかでナッツのような風味があり、ドイツやオーストリアでは、パンやお菓子にスペルト小麦粉を使うのが一般的。ピラフやリゾットなど、米の代わりに使われることも多い。

[20]テフ Teff

「テフ」は鉄分やカルシウム、マグネシウム、マンガン、リンを豊富に含むイネ科の穀物。エチオピアでは、政府が新品種の導入や生産方法の改善に取り組んでいる。テフの小麦粉はマイルドな風味が特徴で、さまざまな料理に使うことができる。蒸したり煮たりして副菜として、また料理のかさ増しにも使われる。

[21]ワイルドライス Wild rice

「ワイルドライス」はお米ではなく、イネ科の草の実のこと。細長い種子は、緑色や茶色、黒色の殻に覆われている。ナッツやトーストのような香ばしさ、噛み応えのある食感が特徴で、玄米や白米に混ぜて食べることが多い。

 

果菜類 Fruits vegetables

「果菜類(かさいるい)」とは、カボチャやトマト、ピーマン、キュウリ、トウモロコシなど、野菜の果実や種実を食用にするものを指す。果菜類の多くは、炭水化物や水分を豊富に含み、一般的な野菜に比べて甘みが強い。温暖な地域でよく栽培され、様々な形で食べることができ、ビタミンCや食物繊維を多く含む傾向がある。

[22]かぼちゃの花 Pumpkin flowers

ビタミンCをはじめとする多くの栄養素が含まれる「かぼちゃの花」。苦味のある中心部(雄しべ)を取り除き、炒めものや揚げ物として使われる。

[23]オクラ Okra
[24]オレンジトマト Orange tomatoes

「オレンジトマト」は、赤いトマトに比べてビタミンAと葉酸(ビタミンB群)が約2倍も含まれており、甘味が強く、酸味が少ないのが特徴。栽培するうえで、害虫にも強い。一般的な赤いトマトと同じように使用することができる。
 

葉物野菜 leafy greens

葉物野菜は一般的に成長が早く、調理しても生でも食べられるため、世界中で様々な料理に使われている。低カロリーで、食物繊維や多くのビタミン、ミネラルを含む。ビーツやカボチャは、実と葉のどちらも栄養価の高い食材だ。

[25]ビーツの葉 Beet greens

捨てられがちな「ビーツの葉」だが、実はビタミンをはじめマグネシウムとカリウムも豊富で栄養価が高い食材だ。また、ビーツは気温が低くても育ち、霜にも強く、生育速度も速い

[26]ラピニ Broccoli rabe

「ブロッコリー・ラーベ」や「イタリアンブロッコリー」とも呼ばれる「ラピニ」は、アブラナ科の植物で、ブロッコリーのような小さな花穂とカブのようなギザギザの葉が特徴。ビタミンや葉酸が多く含まれており、植えてから7~8週間で収穫することができる。イタリアやポルトガル、ポーランド、ウクライナでは、ニンニクや唐辛子と一緒に茹でたりソテーにしたり、日常的に食べられている。

[27]ケール Kale
[28]モリンガ Moringa

その栄養価の高さから、健康補助食品として世界的な人気を集めている「モリンガ」。ビタミンA、B、C、カルシウム、鉄、アミノ酸など、健康維持に欠かせない栄養素が含まれている。
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[29]チンゲンサイ/空芯菜 Pak-choi or bok-choy (Chinese cabbage)
[30]カボチャの葉 Pumpkin leaves

実を収穫した後にそのまま畑に残されることが多い「カボチャの葉」だが、鉄やビタミンK、カロテノイドが豊富に含まれている。品種によっては苦みが強いものもあるが、生でサラダとして食べることができる。蒸したり、ソテーしたりすると甘みが増し、西アフリカでは、スープやシチューに使われる。

[31]紫キャベツ Red cabbage
[32]ほうれん草 Spinach
[33]クレソン Watercress

 

きのこ類 Mushrooms

食用キノコの種類は2,000種類以上。その味と栄養価の高さから、何世紀にもわたって栽培されてきた食材だ。光合成をしないため植物ではなく、菌類に分類される。

[34]えのきたけ Enoki mushrooms
[35]まいたけ Maitake mushrooms
[36]アカハツモドキ Saffron milk cap mushrooms

ロシア料理に欠かせない「アカハツモドキ」。食物繊維が豊富で、ナッツのような香ばしい味わいと肉厚な食感が特徴。欧米の多くのレストランでは、リゾットやパスタに使われる。

 

ナッツ類・種子類 Nuts & Seeds

世界中で広く食べられているナッツ類・種子類だが、多くの種類があるなかで、一般的に食べられているのはごく一部。タンパク質、ビタミンE、良質な脂質が含まれている。

[37]亜麻仁(アマニ) Flax seeds

亜麻科の植物から採れる小さな種子「亜麻仁」。サラダやシリアルに混ぜて食べるのが一般的で、パンやマフィンなどの焼き菓子の小麦粉の半分の代わりにも使うことができる。亜麻仁から作られる亜麻仁油は、必須脂肪酸「オメガ3」を豊富に含む健康的なオイルとして近年人気を集めている。

[38]麻の実 Hemp seeds

「ヘンプシード」とも呼ばれる「麻の実」は、世界中でパンケーキミックスやマーガリンなどさまざまな用途に使われており、日本では殻付きのまま七味唐辛子に入っているのが一般的。

[39]ごま Sesame seeds
[40]くるみ Walnuts

 

根菜類 Root vegetables

根菜類にはさまざまなビタミンやミネラルが含まれており、冷涼な季節に育つ丈夫な作物だ。一度収穫すると、他の野菜に比べて比較的長い期間保存することができる

[41]西洋黒ゴボウ Black salsify

厚く黒い皮の下にある淡いクリーム色の果肉は、食物繊維が豊富で、ビタミンEや鉄分を含む。フランス、オランダ、ドイツなどの冷涼で温暖な気候の地域でよく育つ。ローストしてスープやシチューに使われたり、ジャガイモのように茹でてマッシュしたり、焼いたりして食べられる。

[42]根パセリ(ルートパセリ) Parsley root

「Dutch parsley」とも呼ばれる「根パセリ」は、15世紀にオランダの野菜シチューの主材料として誕生したといわれる。セロリ、ニンジン、パセリの中間のような香り高い味わいが特徴。炒めてフリットやチップスにしたり、生のまますりおろしてサラダに使われることも。

[43]大根 White icicle radish (winter radish)

 

スプラウト Sprout

スプラウトの歴史は5,000年前にさかのぼり、中国の医師はその非常に高い栄養価から薬として使用していたといわれる。種や豆が発芽するためには、高温多湿の環境が必要で、そのため細菌が繁殖するリスクもあるが、「健康な人であれば栄養価の高さがそのリスクを上回る」という専門家の見解から、「未来の50食品」に選ばれている。日本では、「もやし」をはじめ、かいわれ大根や豆苗、ブロッコリースプラウトが身近なスプラウトとして知られている。

[44]アルファルファ スプラウト Alfalfa sprouts

「アルファルファ」は、アメリカで最も日常的に使用されているスプラウト。シャキシャキとした歯ごたえとマイルドな風味で、生のままサラダとして食べたり、サンドイッチやスープに使われる。

[45]金時豆 スプラウト Sprouted kidney beans

豊富なタンパク質とその食感から、プランドベースミートの材料に使われる、金時豆。発芽させることで、その栄養価は3倍にもなるという。「金時豆 スプラウト」はスープやサラダのトッピングに使われ、ほんのりとした苦味は甘みのあるソースやドレッシングによく合うとされる。

[46]ヒヨコ豆 スプラウト Sprouted chickpeas

「ヒヨコ豆」は中東の料理でよく使われる黄色く丸い豆。濃厚でクリーミーなナッツのような風味が特徴で、金時豆と同様にプランドベースミートの材料としても注目されている。発芽させることで、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などの栄養素の吸収率を高めることができる。

 

芋類 Tubers

炭水化物を多く含み貴重なエネルギー源となる、芋類。茹でたり、焼いたり、甘く煮たり、様々な食べ方がある。

[47]蓮根(レンコン) Lotus root
[48]ウベ(紅山芋) Ube (purple yam)

フィリピン原産の「ウベ」。日本では「ヤムイモ」「紅山芋」「ダイジョ」とも呼ばれる。栄養価が高く生育が早いため、熱帯・亜熱帯では「famine crop(飢饉作物)」として知られている。鮮やかな紫色の色合いはフラボノイドであるアントシアニンに由来し、ビタミンEと食物繊維が豊富。ジャガイモと同じように調理することができ、フィリピンでは「ube halayá(ウベハラヤ)」という甘いプディングにして食べることが多い。

[49]ヒカマ(クズイモ/葛芋) Yam bean root (jicama)

メキシコ原産のマメ科の野菜「ヒカマ」。収穫量の多い植物で、熱帯や乾燥地帯でも簡単に育てることができる。また、ヒカマを栽培することで窒素固定による土壌の肥沃化にも役立つ。ビタミンCと食物繊維を含む低カロリー食材で、水分が多く含まれているため、ジューシーで爽やかな味わいが特徴。スライスしてサラダやスナックとして食べられている

[50]チレンブ Red Indonesian (Cilembu) sweet potatoes

インドネシアのジャワ西部チレンブ村で採れるサツマイモ。ビタミンA、C、E、マンガンなどの必須栄養素が含まれている。焼き芋にすると、独特な香りと蜜のような甘みがある。近年、需要が高まっており、シンガポールや香港、日本、韓国、タイ、マレーシアに輸出されている。

 

まとめ

いかがだっただろうか。今回紹介した「The Future 50 Foods(未来の食材50)」のなかに次のような文章がある。「健康や環境のために『食べてはいけない』というアドバイスやプレッシャーで溢れかえる世の中で、私たちはより多くの食の選択肢を提供し、前向きな変化を促したい。」

レポートにある50種類の食材のなかには、海苔や大豆、オクラ、マイタケなど、日本人にとって馴染み深い食材がいくつも含まれている。サステナブルなお店づくりに一歩近づくために、まずはそうした身近な食材を積極的にメニューに取り入れることから始めてみるのも良さそうだ。

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【参照サイト】 The Future 50 Foods

table source 編集部
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table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆さまに向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
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