フルーツミート

大豆ミートなどに続く新たなプラントベースミート(植物性代替肉)として期待される「フルーツミート」をご存知だろうか。

その特徴は、温室効果ガス排出量の削減や、アニマルウェルフェアの向上などに寄与するサステナブルな食品であることだ。フルーツミートが代替肉として優れている理由や、飲食店がフルーツミートを使うメリット、利用する際に押さえておきたいポイントを紹介しよう。

フルーツミートとは

フルーツミート

フルーツミートとは、ジャックフルーツでつくられた代替肉のことをいう。糖質や脂質はゼロに近く低カロリーなうえ、食物繊維はごぼうより多い。栄養が豊富で身体にやさしい植物性代替肉(プラントベースミート)だ。

原材料であるジャックフルーツはパラミツ(波羅蜜)とも呼ばれ、東南アジアで日常的に食べられている果物の一種。ドリアンと混同されることもあるが、別の果物だ。

ジャックフルーツは、現地ではカレーの具として食されることが多い。大きなものは長さ70cm、重さ40~50kgにもなり、「世界一大きな果物」と呼ばれるほどだ。

フルーツミートは、シンガポールやマレーシアに拠点があるIraNoah社によって開発された。東南アジアの食材の加工などを手がけるSustainable Food AsiaがIraNoah社と提携し、日本で唯一、フルーツミートの輸入・販売をおこなっている。

フルーツミートが代替肉として優れている理由

フルーツミート

ジャックフルーツを使ったヴィーガン丼

大豆ミートなどのプラントベースミートがあるなか、フルーツミートが注目されていることには理由がある。フルーツミートが代替肉として優れている点を解説したい。

サステナブルである

動物性の肉の生産に比べると、植物であるフルーツミートの生産における環境負荷は少ない

畜産由来で排出される温室効果ガスの量は、年間7.1GtものCO2に相当し、自動車や飛行機などによる排出量にも匹敵する。その内、44%は牛をはじめとした動物の消化器官内発酵によるメタンガス排出だ。さらに家畜に与える飼料の生産によるものが41%もある状況だ。植物性のプラントベースミートの活用が広がれば、畜産物の量を削減でき、温室効果ガスの排出を抑えることにつながる。

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食感と色が本物の肉に近い

フルーツミート

インドでカタルケバブとも呼ばれるジャックフルーツで作られたパティ

フルーツミートは程よく柔らかく、他の植物性代替肉と比較すると食感が良い。ねっとりとしていて本物の肉に近く、ジューシーな味わいだ。ハンバーグのパティのように成形もできる。これは原材料であるジャックフルーツの細胞形状が牛肉に近いためだ。

さらに、ジャックフルーツを加熱処理すると動物肉の赤身に近い色になることから、フルーツミートは、まるで肉のような色をしている。調理前のフルーツミートは自然な赤みがかった色で、見た目はツナのようだ。

着色料を加えなくても肉のような赤みを出せるのは、IraNoah社の技術によるものである。一般的な植物性代替肉には複数の添加物が使用されるが、IraNoah社がつくるフルーツミートの主な原料はジャックフルーツのほかにキノコや植物油など、極めてシンプルだ。この加工技術はマレーシア国際イスラム大学とIraNoah社が共同で開発した技術で、特許も取得している。

味や臭いにくせがない

フルーツミート

ジャックフルーツは、完熟すると甘いメロンのような味になり、独特の香りを放つ。しかし、代替肉に使用するのは熟していない果実で、くせがない。フルーツミートには甘みがなく、果物でできているとは分からないほどだ。わずかな酸味があるが、無味に近い。かすかにフルーティーな香りがするものの、ほかの代替肉のような独特の臭いがないのもフルーツミートならではだ。たとえば、代替肉として知られる大豆ミートには、大豆特有の臭いが感じられる。

一方、フルーツミートは熟していない果実を加熱することで、臭みを消しているのだ。味も香りも料理の邪魔をしないため、さまざまなメニューに活用できるだろう。

保存性が高い

フルーツミートは、熟していないジャックフルーツを原料としてつくられている。開発元のIraNoah社は、果実を加熱して作ることによってフルーツミートの保存性を高めた

飲食店での活用や在庫管理を考えると、すぐに傷まない点は食材としての扱いやすさに直結するといえる。

原材料の調達が比較的容易である

フルーツミートの原材料であるジャックフルーツは、成長が非常に早く、3か月で約20kgもの実をつける。そのため、調達が比較的容易といえる。

一方、代替肉の代表格である大豆ミートは、需要の高まりに伴い、原材料となる大豆の獲得競争が起こる可能性も否定できない。原材料の供給不足を防げるフルーツミートは今後、大豆ミートに代わる代替肉として浸透していくことも予想される。

飲食店がフルーツミートを使ったメニューを提供する魅力やメリット

フルーツミート

フルーツミートを使ったヴィーガンカレー

フルーツミートは代替肉として優れているだけではなく、それを扱う飲食店にもメリットをもたらす。飲食店がフルーツミートを使ったメニューを提供する魅力を紹介したい。

SDGsへの取り組みをアピールできる

フルーツミートは、廃棄されるジャックフルーツを原材料としているため、食材として取り入れることでフードロスの解消に貢献できる。

ジャックフルーツは東南アジアに育つフルーツで、赤道直下エリアでは供給過多により大半が廃棄されているのが現状だ。成長が早く消費が追いつかないことや、現地の加工技術が未熟なために保存がきく状態を維持できないことが要因である。

捨てられてしまう果物を代替⾁という別の⾷品にアップサイクルし、メニューとして提供することで、SDGsへの取り組みを顧客にアピールできるだろう。

環境問題の解消に貢献できる

食品の生産や加工の過程においては温室効果ガスが排出されており、地球温暖化につながる問題となっている。生産から加工・流通、調理や廃棄までを含めると、食料からの温室効果ガス排出量は、人為的な温室効果ガス総排出量の21~37%を占めている状況だ。

しかし、植物性食品に限っては、動物性食品よりも生産過程における温室効果ガス排出量が少ない。
環境省によると、日本人の食事におけるカーボンフットプリントは、年間1,400kgCO2e/人だ。カーボンフットプリントとは、原材料調達から廃棄に至るまでに排出される温室効果ガスをCO2に換算した数値を指す。

肉類、穀類、乳製品の順でカーボンフットプリントが高く、野菜や果物は低い。動物性の肉をフルーツミートに置き換えることによって、生産過程における温室効果ガス排出量の削減に貢献できる。

健康志向やヴィーガンのお客さまへアプローチできる

近年、動物性食品を食さないヴィ―ガンやベジタリアンの人口が拡大している。日本人においても例外ではなく、動物性食品の摂取を避ける人が増えてきた。

農林水産省の調査によると、海外旅行にて飲食店等を選ぶ際に「ベジタリアン等の対応店でなければ入店しない」と答えた人は約5割にも上る。その状況下でもフルーツミートを取り入れ、ヴィ―ガンやベジタリアン対応のメニューを用意することで、新たなお客さまを呼び込めるだろう。

フルーツミートは糖質や脂質を抑えられるうえに、食物繊維が豊富で健康的な食品だ。宗教上の理由によるヴィ―ガンだけではなく、健康志向の人にもアプローチできる。

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飲食店がフルーツミートを使うときに知っておきたいポイント

フルーツミート

フルーツミートを使ったヴィーガンタコス

フルーツミートには多くの利点があるが、使用する際には工夫や配慮が必要となる側面もある。あらかじめポイントを押さえておこう。

調味料の味をなじませるひと手間が必要

フルーツミートの特徴のひとつに、水分の多さが挙げられる。そのため、調味料の味をなじませるためには、調理前に水分を飛ばすひと手間が必要だ。

しかし、そのほかはひき肉と同様に調理できるため、取り扱いはそれほど難しくない。もともと無味に近いことから、どのような味付けにもなじむだろう。

ヴィーガン向けメニューを提供する場合は配慮が必要

フルーツミートを使い、ヴィーガン向けメニューとしてアピールする場合は、肉や魚を扱う料理とは調理器具を分ける配慮が必要だ。

ヴィーガンやベジタリアンの人々は、動物性の食品が意図せず混入することを好ましく思わない。たとえば食材を焼く鉄板を使い回すことで肉汁が混入するのが、その一例だ。

観光庁の調査によると、飲食店を選ぶ際に「原材料の混入(コンタミネーション)がないことが確認できないと入店しない」と回答した人は約4割もいる。こうした実情をふまえ、調理器具などの分別を怠らないようにしよう。ヴィーガンやベジタリアン向けの料理であることがわかるよう、メニュー表にはアイコンや目印をつけるといった工夫もしたい。

【関連記事】 飲食店が知っておきたいヴィーガンメニューを作る5つのポイント

日本では流通が少なく価格が不安定

日本へのフルーツミートの輸入量は現段階で少ないため、価格が不安定になっていることが懸念点だ。原材料であるジャックフルーツは現地で供給過多であるものの、加工品として日本国内での流通が少なければ、コストに反映されるのは避けられない。

しかし、フルーツミートはまだ注目され始めたばかりだ。優れた代替肉として今後定着すれば、大豆ミートや動物肉と同じ価格帯になると推測される。

フルーツミートを使っている飲食店の事例紹介

2024年1月現在、日本国内でフルーツミートを使った料理を提供している飲食店を見つけるのは非常に難しい。このフルーツミートにいち早く注目し、メニューとして取り入れているのが「サステなおむすび」だ。

東京都港区虎ノ門ヒルズの側にある同店では、フルーツミートのしぐれ煮をのせたおむすびを販売している。生姜の風味が活きた優しい味付けからは、フルーツミート自体の味や臭いにクセがないことを実感することができる。食感は牛肉などに比べて若干歯切れが良く、脂感も少ない。テレビ番組で紹介されたこともあり「フルーツミートを食べてみたい」と来店する人もいるそうだ。

フルーツミートを活用してサステナブルな飲食店づくりを実現しよう

フルーツミート

フルーツミートを使ったヴィーガンバーベキューバーガー

フルーツミートは、食感や色が本物の肉に近いうえに、独特の味や臭いがない。栄養価も高く、代替肉として非常に優れた食材だ。海外では、ヴィーガンやベジタリアンメニューの食材として幅広く使われている。

さらに、フルーツミートが普及することで畜産物の消費減につながるため、温室効果ガス排出量の削減やアニマルウェルフェアの向上といったSDGsの目標達成にも貢献することができる。

飲食店がフルーツミートを使ったメニューを提供することで、環境や健康に対する意識の高いお客さまの需要に応えることができる。何より、日本国内ではまだ知る人の少ない目新しい食材だ。こうしたサステナブルで新しい食材を取り入れることで、食のトレンドに敏感なお客さまとの接点をつくるのに役立ててはいかがだろうか。

【関連記事】

飲食店が知っておきたいヴィーガンメニューを作る5つのポイント

【参照サイト】 Sustainable Food Asia株式会社:「オーガニックグリル鵠沼海岸」に「フルーツミート」を使ったメニューが登場
【参照サイト】 共同通信グループNNA:ジャックフルーツから「肉」味わい食感まるでそっくり
【参照サイト】 日本経済新聞:食品EC新興、果物由来の代替肉を活用 ガパオなど提供
【参照サイト】 日経クロストレンド:大豆肉の次は「フルーツミート」? フードテックの注目企業5選
【参照サイト】 経済産業省 特許庁:特許庁広報誌「とっきょ」2022年10月11日発行号
【参照サイト】 環境省:サステナブルで健康な食生活の提案
【参照サイト】 東京農業大学:特別コラボ企画「ヴィーガン」メニュー第2弾
【参照サイト】 農林水産省:日本農林規格調査会議事録(令和4年6月29日開催)
【参照サイト】 国土交通省 観光庁:飲食事業者等におけるベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド

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