まだ食べられる食品が捨てられてしまう食品ロス。世界では、飢えや栄養不良に苦しむ人々が約8億人いるなかで、食料生産量の3分の1に当たる約13億トンの食料が毎年廃棄されている。「日本では、お茶碗約1杯分(約136g)の食べ物が毎日捨てられている」という農林水産省の報告を目にしたことがある方も多いのではないだろうか。

最近では、2019年に施行された「食品ロス削減推進法」についての報道や小売店舗ごとの呼びかけの影響もあり、食品ロスへの関心が高まりつつある。また、コロナ禍で「社会と自分の暮らしがつながっている」と実感したことで、人々のサステナビリティ意識が高まっているという調査結果もある。一人ひとりの意識が変化していることで、食品ロス削減の取り組みを行っている人も増加しているようだ。
消費者庁の行った消費者の意識に関する調査では、2020年の時点で76.6%の人が「食品ロス削減のために何らかの行動をしている」と答えている。消費者庁では2025年にはこの割合を80%以上にすることを目標にしており、今や飲食店も食品ロス対策に向き合わなければいけないのは明白だ。

本記事では、海外で進んでいる食品ロス対策をご紹介したい。

1.生ゴミの堆肥化

ドイツ・ベルリンにある100%ヴィーガンレストラン「FREA」には、ゴミ箱が存在しない。地域の有機農家から仕入れた新鮮な食材は、ほぼ全てが無駄なく使われるが、どうしても出てしまう皮や食べ残しなどの生ゴミは、店内にある「Gersi」と呼ばれる堆肥製造機で24時間以内に堆肥化されている。この堆肥は、仕入れ先である農家が持ち帰り、畑で使用されるという。

2.メニューの種類を絞る

米国で1,000店舗以上を展開するカジュアルダイニングレストランチェーン「Bloomin’Brands」は、メニューを厳選し、数を絞ることで、食品ロスの発生を抑えることができたことを報告している。また、メニューの数が減ったことで、従業員が料理の下ごしらえに費やす時間を減らすことができ、人件費の節約にもつながったという。結果的にBloomin’Brandsでは、コロナによって減少していた売り上げを回復させることに成功している。

3.規格外の野菜を使う

タイのロイヤルプロジェクト財団によると、不恰好な見た目で店頭に並ぶ前に破棄される農作物は生産量全体の30%にのぼるという。

そこで、タイ発のアパレルブランド「Greyhound 」が手がけるレストラン「Greyhound Café」では、「Perfectly Imperfect(完璧に不完全)」というコンセプトのもと、ロイヤルプロジェクト財団とのコラボレーションプロジェクトとして、7つの新開発メニューを期間限定で提供。すべてのメニューには、通常であれば廃棄されるはずの規格外の農産物が含まれている。形の歪んださつまいもや成長しすぎたズッキーニ、真っ赤ではないチェリートマトなどだ。
特別メニューは、zucchini spaghetti (ズッキーニスパゲッティ)やTwisted Udon(ツイストうどん)、野菜の天ぷらなど、国内外のスタイルを取り入れたユニークな品揃え。スイーツやドリンクも楽しむことができる。

4.食品の保存方法を見直す

冷蔵庫の中の整理をすることで、食材が見やすくなり、使い忘れを防ぐことができる。さらに、中身の見える保存容器を使うことで同じ食材を重複して購入してしまうというミスもなくなるだろう。

米国・カルフォルニア州で誕生した「stasherbag(スタッシャーバッグ)」は、中身の見える密閉保存容器。原料は食品用品質として認められている100%ピュアプラチナシリコーンで、使い捨てではなく、繰り返し使えるエコ容器として世界中で使われている。冷凍・冷凍庫での保存、電子レンジでの加熱、沸騰したお湯やオーブンでの調理などにも対応している。さらに、水性マーカーでラベル書きをすることも可能なので、保存した日や使用期限を記入することもできる。
さらに、2021年7月に発売された、世界の絶滅危惧種が苦しんでいる海をテーマにしたデザイン「アースコレクション」の売り上げの一部は「公益財団法人日本自然保護協会」の活動に役立てられる。

5.お客さまへ食べ残し削減を呼びかける

中国では2021年4月29日、食べ残しを禁止する法律「反食品浪費法」が可決された。過剰な量の食べ残しをした客に対して、飲食店側は食べ残した分の処分費用を請求できる。飲食店に対しても、店員は客が適量を注文するよう促す必要があり、大量に注文させた場合は最大で1万元(約16万円)の罰金となる。

現状、日本にそのような法規制はないが、消費者庁や各自治体が食べ残し削減啓発ポスターやポップ、ガイドなどを作成・公開しているので、活用してみてはいかがだろうか。
(消費者庁サイト:食品ロス削減について行動する

6.食べ残しを持ち帰るための容器を用意する

米国では日常的に行われている「doggy bag(ドギーバッグ)」。レストランやパーティーで、お客さまがついつい食べきれずに残してしまった料理を持ち帰る袋や容器のことだ。「家で待つ愛犬にも分けてあげるため」と言い訳をして持ち帰ったことから、この名がついたとされる。

食べ残してしまったものを持ち帰ることで、食品ロスの削減につながるサステナブルなシステムだが、提供する飲食店にとって気がかりなのが食品安全との両立だ。消費者庁・農林水産省・環境省・厚生労働省が連名で発表している留意事項には、「食中毒等のリスクや取扱方法等、衛生上の注意事項を十分に説明しましょう」「清潔な容器に、清潔な箸などを使って入れましょう。水分はできるだけ切り、残った食品が早く冷えるように浅い容器に小分けしましょう」などといった具体的なポイントが記載されているので、ドギーバッグを実施の際には事前に目を通しておくことをおすすめする。

また、容器の素材は、再生紙や竹パルプ、バイオプラスチックなどの環境に配慮されたものを使うことで、お客さまに環境配慮の姿勢を伝えることができるだろう。

7.食品ロス削減への取り組みをスタッフと共有する

スタッフと共に食品ロス削減への意識を高めていくために、食品ロスの現状を学んだり、お店の姿勢や方向性についてスタッフに共有したりする場を設けることは、非常に重要なポイントだ。

全米レストラン協会では、継続的に意識を高めるためにスタッフのうち1人か2人を食品ロス削減の「チャンピオン」に任命することを提案している。チャンピオンには、スタッフミーティングで、食品の無駄をなくすためのレストランの目標について話してもらう。繰り返し、強化することが重要だとしている。
また、食品廃棄の意識と食品廃棄が環境に与える影響について、スタッフの入社時に説明しておくことも効果的だ。
なお、全米レストラン協会はWWFと共同で、スタッフの意識を高めるための短い動画を開発・公開しているので、参考にしてみてはいかがだろうか。

8.食材がなくなるまで価格を下げていく

最後に、カナダのトロントにあるレストラン「Farmhouse Tavern」のユニークな取り組みを紹介したい。
Farmhouse Tavernでは、毎週日曜日の15時からは食材が全てなくなるまで1時間ごとに価格を下げて提供している。これにより、レストランを営業をしていない月曜日から水曜日の夕方までの間は、冷蔵庫の中を空のままにしておくことができるのだ。
こうすることで、食品廃棄物の削減を図りながら、通常は閑散としている日曜日にお客さまを呼び込んでいるという。

まとめ

今すぐに始められそうなものから、取り掛かるのに時間がかかる事例もあったかもしれない。
食材ロス削減の取り組みは、環境負荷を減らすだけでなく、仕入れをはじめ調理や準備などにかかる時間や人件費、廃棄物の処理にかかるコストの削減が期待できる。
冒頭でも述べた通り、消費者の食品ロスへの意識は着実に高まっており、飲食店にとっては避けては通れない課題だ。まずは、できることから始めてみてはいかがだろうか。

【参照サイト】 消費者庁:食品ロス削減関係参考資料
【参照サイト】 電通:よりサステナブルな世の中へ。コロナ禍がもたらした生活者意識の「5つのシフト」
【参照サイト】 FREA
【参照サイト】 FEWER ITEMS MEAN PROFIT IMPROVEMENT FOR OUTBACK STEAKHOUSE’S OWNER
【参照サイト】 Royal ProjectFoundation
【参照サイト】 Greyhound Café
【参照サイト】 Greyhound’s “Perfectly Imperfect” menu makes the most of ugly produce
【参照サイト】 stasher
【参照サイト】 消費者庁:食品ロス削減について行動する
【参照サイト】 飲食店等における「食べ残し」対策に取り組むに当たっての留意事項
【参照サイト】 Reducing food waste is easier than you think
【参照サイト】 Farmhouse Tavern

table source 編集部
table source 編集部
table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆様に向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
Share
This