FOOD MADE GOOD

2023年11月20日、「一般社団法人 日本サステイナブル・レストラン協会(SRA-J)」は3回目となる、レストランのサステナビリティアワード「FOOD MADE GOOD Japan Awards 2023」を、ザ・キャピトルホテル 東急にて開催した。

SRA-Japan加盟レストランのなかでも特にサステナブルな取り組みを推進し、「調達・社会・環境」の3つの指針に基づくレーティングにおいても高評価を得たレストランから大賞と部門賞を決定。さらに、SRA-Jのパートナーから授与される、特別賞(リサイクル、フェアトレード)を加えた、計6部門の受賞店舗が表彰された。

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SRA-Japanは、持続可能な食の循環を実現させることを目的に2010年にイギリスで設立された団体「サステイナブル・レストラン協会(SRA)」の日本支部。サステナブルなフードシステムの実現に向けたサポートや、網羅的な指標で「食」の持続可能性をはかることで、持続可能なフードシステムの構築に貢献している。SRA-Japanのレーティング指標は食のアカデミー賞として知られる「世界のベストレストラン50(The World’s 50 Best Restaurants)」の評価指標としても使用されており、世界的な認知度も高い。

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今回のコラムでは、各賞を受賞したレストランの受賞理由やコメント、会場の様子などをレポートする。

[大賞]PIZZERIA GTALIA DA FlLIPPO

Sponsored by ザ・キャピトルホテル 東急
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大賞に輝いたのは、東京都練馬区のピッツェリア「PIZZERIA GTALIA DA FlLIPPO(ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ)」。「調達・社会・環境」というそれぞれの部門で高い点数を得ており、特に従業員の働き方、成長のための制度に関する先進的な取り組みは、「他店の模範となる」と評された。

同店では、積極的に自然農法を行う農場を訪問したり、自分たちで農作業を実践したりと、食の本質に向き合ってきた。また、福祉施設との連携や後進の育成など、伝播力を活かして周囲を巻き込みながら、地域コミュニティの活性化にも積極的に貢献している。

PIZZERIA GTALIA DA FlLIPPO 岩澤正和さん「今日出席できなかったスタッフたちにも感謝の気持ちでいっぱいです。今まで皆で、今すぐには思い出せないくらいの数々の取り組みを行ってきました。数字を追いかけなくてはいけない業界ではありますが、目に見える資産よりも目に見えない資産にフォーカスして考えてきました。まずは、『小さなことからでもコツコツと』という想いで、若手のメンバーたちもそれぞれ考え、奮闘してきました。日本の飲食店の価値を高め、社会的なポジションを確立するためには、サステナビリティの考え方は必要不可欠なものだと思っています。今後も少しずつ仲間を集めながら、こうした考えを飲食業界全体に広めることに取り組んでいきたいです。」

調達部門[BEST調達賞]野生のピッツェリア SELVAGGIO

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愛媛県内の生産者や漁業者の方とのコミュニケーションに力を入れ、信頼関係を構築した上で密に連携をとりながら調達を行なっている「野生のピッツェリア SELVAGGIO」。自社農園ではスタッフが自然栽培や無農薬・無化学肥料の野菜を栽培。自然栽培を行う大変さを理解した上で、地域に協力するなど、レストランとしての枠組みを超えてサステナビリティに取り組んでいる点が評価された。地産地消を経て、さらに「自産自消」を推進する姿勢や、アニマルウェルフェアに配慮したベターミートの提供も評価のポイントとなった。

野生のピッツェリア SELAVAGGIO 北久裕大さん「去年一昨年と受賞ができなかった悔しさがあり、『今年こそは』との想いでこの一年、日々取り組んできた。人口270人の地域でレストランをやるうえで、ほぼ毎日生産者さんから直接調達しています。レストランが獲った賞というより、生産者さんと一緒に獲った賞だと感じています。」

社会部門[BEST社会賞]ザ・キャピトルホテル 東急 オールデイダイニング「ORIGAMI」

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「ザ・キャピトルホテル 東急」内にあるオールデイダイニング 「ORIGAMI」。社会部門の評価ポイントとして重要度の高い「従業員が幸せに働く状況」において、労働環境が整備され、研修制度も充実。農場や漁場にシェフやスタッフが訪問するなど、積極的な育成にも力を入れている。

ホテル内のレストランという特性を活かし、お客さまに対するサステナビリティの啓発活動をはじめ、同業他社との協働など、サプライチェーン全体の持続性の強化を力強く牽引する姿勢も評価された。

ザ・キャピトルホテル 東急 オールデイダイニング ORIGAMI 佐久間 美宏さん「自分でも、良い職場で働いてるな、とつくづく感じています。昨年のSRAの加盟以来、レストランだけでなく、ホテル全体でどう取り組むべきかを模索してきました。社内研修や講習、掲示物などを通し、社内の皆さんへの周知を続け、活動が徐々に広まっていきました。特に、昨年より4回に分けて開催した『サステナブルテーブル』に、取り組みの道標があったように思います。」

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環境部門[BEST環境賞]トラットリア ケナル

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数々の飲⾷店ブランドを国内外で直営及びフランチャイズで750店舗以上展開しているサンマルクグループ会社として、SDGsを推進する「株式会社サンマルクイノベーションズ」が運営する「トラットリア ケナル」。BEST環境賞の受賞は2年連続。

岡山県真庭市・蒜山にある同店では、地元の農家や農協、畜産農家とも連携し、地場産業を盛り上げている。特に、環境配慮の取り組みは、食品残渣の肥料化や飼料化など、長期間にわたってコツコツと積み上げてきたもので、完成度の高い報告書とともに高く評価された。また、カーボンフットプリントの算出と分析など、世界的に事例の少ない取り組みにも「まず、やってみよう」という姿勢で、積極的に着手している。

株式会社サンマルクイノベーションズ 江下健一さん「現場に立つ皆んなが会社の理念や、お店のあるべきコミットメントをしっかり理解し、日々運営していることが今回の受賞に繋がっていると思います。本当に感謝しています。昨年の受賞以来、SDGsツアーの方々の来店が増えています。地元ホテルや真庭市との共創など新たな機会にもつながりました。」

特別賞[BESTリサイクル賞]厚木エリア

フィーコディンディア/イタリアンバールDari
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BESTリサイクル賞では、2023年7月31日から8月30日まで行われた飲食店から紙パックのリサイクルを広げるプロジェクト 「Food Made Good紙パック50アクション」に参加した店舗から、特に成果をあげた店舗をエリア単位で表彰。

今回受賞した「厚木エリア」では、飲食店の他に、商業施設や子供会に至るまで、地域を巻き込み、今後につながる啓蒙活動に取り組んだ。

厚木エリア フィーコディンディア 横井拓広さん「まず、自分たちにこのアクションの大切さを落とし込むところから始めました。今後はどのように地域のレストランを巻き込んでいくか、という課題にも取り組んでいきたいと思います。」

特別賞[BESTフェアトレード賞]haishop cafe 渋谷スクランブルスクエア店

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BESTフェアトレード賞では、2023年5月のフェアトレード月間に実施された「フェアトレードミリオンアクションキャンペーン」に参加し、フェアトレード商品を使ったメニューを提供した加盟店の中から、特にすぐれた取り組みを行った店舗を表彰。

「株式会社inovation design」の運営するサステナブルカフェ「haishop cafe 渋谷スクランブルスクエア店」は、フェアトレード月間のキャンペーン協力のなかで、カフェ前のスペースで、様々な学校の学生70名以上と連携をしてポップアップショップを開催。飲食店の枠を超え、消費者が楽しい体験を通して問題について考えられるよう取り組む姿勢が評価された。

株式会社inovation design 表 秀明さん「キャンペーンを推進してくれたメンバーと、協力してくれる皆さんに心から感謝の気持ちを伝えたいと思います。お客さま一人一人に向けて『僕たちがいつも憩いのひとときとして楽しんでいるコーヒーや紅茶の背景にある社会問題』を、皆んなが精一杯伝えてくれた結果だと思っています。」

ファインボーンチャイナ製の表彰プレート

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また、各受賞者に贈られたのは、1908年創業の老舗用食器メーカー「ニッコー株式会社」による表彰プレートだ。FOOD MADE GOOD Japan Awardsのために、石川県の自社工場で一つひとつ丁寧に作られたオリジナルプレートは、高級磁器であるファインボーンチャイナ製。同社では、工場での生産過程で生じてしまうファインボーンチャイナ製の規格外品をリサイクルし、サステナブルな肥料「BONEARTH(ボナース)」を開発・製造するなど、サーキュラーエコノミーの原則に沿ったさまざまな取り組みを進めている。

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会場のフードも、「サステナビリティ」がテーマ

今回のアワードでは、「サステナビリティ」をテーマに、会場でもある「ザ・キャピトルホテル 東急」によるオードブル中心の軽食とスイーツが、ブッフェスタイルで提供された。

メニューには環境や社会に配慮された食材が使われており、ザ・キャピトルホテル 東急の曽我部総料理長による「ボナース野菜を使ったベジそぼろとマイクロリーフの菜園スタイル」をはじめ、プラントベースフードを使った「ベジミートとあやめ蕪のミニバーガー」、サステナブル認証シーフードを使った「スモークサーモンとレッドキャベツの竹炭サンド」など、サステナブル品々が並んだ。

参加者は「どのお料理もサステナブルでありながら、本当に美味しく、食材を活かした多様な味わいに驚きました。」「それぞれのメニューにストーリーがあり、初対面の人とも『この食材、珍しいですよね』『このデザートもう食べてみましたか?』など、自然と会話が生まれていました。」と、各々が楽しみながらサステビリティを体感することができたようだ。

今回のアワードでは、各受賞者が自身の取り組みだけにとどまらず、工夫を重ねて周囲を巻き込み活動を広げていくことや、ノウハウを伝えながら後進を育成する、ロールモデルとしての姿が印象的だった。今後も、食のサステナビリティを牽引する存在として、SRA-Japan加盟レストランの活躍に期待できそうだ。

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table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆さまに向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
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