発展途上国の生産者や労働者の生活改善と自立に向けて、フェアトレードの仕組みが注目されている。フェアトレードは、発展途上国の農産物生産者や労働者に公正な報酬を提供し、持続可能な農業と生産を支援する仕組みだ。
日本国内でも、フェアトレードを取り入れることで、サステナブルな活動に取り組みたいと考えるレストランやホテルも多いのではないだろうか。
この記事では、レストランやホテルが行っている、フェアトレードに関する取り組み事例について紹介する。フェアトレードの魅力や必要性を把握することで、持続可能な食文化へのヒントが見えてくるかもしれない。
フェアトレードの取り組み事例
持続可能な未来のために、フェアトレードへの取り組みが広がっている。実際にフェアトレードに取り組んでいる、レストランやホテルの事例をそれぞれ紹介しよう。
レストランの取り組み
ここでは、フェアトレードに賛同し、持続可能な食文化を支えるレストランの事例を紹介する。
いずれのレストランも、サステナブルなフードサービス実現のための飲食店レーティングプログラム「FOOD MADE GOOD」の展開を行う、一般社団法人「日本サステイナブル・レストラン協会(SRA-J)」のメンバーレストランであり、地球環境や人権など、多角的な視点からサステナブルな取り組みを実施している。
BOTTEGA BLUE
兵庫県芦屋市にあるイタリアンレストラン「BOTTEGA BLUE(ボッテガブルー)」では、店舗で提供する料理に、フェアトレード認証を受けている食材や調味料を使用。
ECサイトで販売中の「濃厚チョコレートテリーヌ」にもフェアトレードのチョコレートや砂糖が使われている。このテリーヌは米粉を使用したグルテンフリースイーツのため、小麦アレルギーの人でも食べられる。
また同店は、日本サステイナブル・レストラン協会の国内第一号店でもあり、オープン当初から「食品ロス・ゼロ」を貫くなど、サステナブルなお店づくりに積極的に取り組んでいる。
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トラットリア ケナル
岡山県真庭市・蒜山高原にある「トラットリア ケナル」は、地産地消を味わえるイタリアンレストランだ。フェアトレード認証などサステナブル認証のついたコーヒーや紅茶を提供している。
また、ケナルでは地産地消の食材を存分に味わうことも出来る。卵はアニマルウェルフェアを考慮した岡山県産の平飼い卵。乳製品は地元蒜山の蒜山ジャージーを取り入れるなど、積極的に地元・国産の食材を使用している。
ユニフォームには、毎年大量に焼却処分されているバナナの木の繊維を使用したユニークな生地「バナナデニム」を使用。コーヒーの出涸らしを使って深い茶色に染め上げている。
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TRONCONE
埼玉県所沢市にある「TRONCONE(トロンコーネ)」は、食材にこだわったイタリアンレストランだ。フェアトレードやエシカルについて考え、環境にやさしい観点で食材を選定している。
また、テイクアウトやデリバリー用の、びん詰め容器を回収したり、プラスチックはなるべく使わないようにしたりするなど、環境負荷をかけないための取り組みも行なっている。
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ITOCHU SDGs STUDIO RESTAURANT 星のキッチン
東京都港区にある「ITOCHU SDGs STUDIO RESTAURANT 星のキッチン」は、サステナブルな食体験ができる未来志向のレストランだ。フェアトレードのチョコレートや、地球環境にやさしいプラントベースのチーズを提供している。
また、ギャラリースペースでは、植物由来の素材でできた国産のエナジーバー「KAKI ENERGY BAR」や、捨てられる食器から作られた肥料「BONEARTH(ボナース)」などのサステナブルなアイテムを展示。その場でQRコードからオンライン購入することができる。
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ホテルの取り組み
ここでは、フェアトレードに賛同し、持続可能な社会活動をしているホテルの事例を紹介する。
クロスホテル札幌
オリックス・ホテルマネジメント株式会社が運営する「クロスホテル札幌」は、フェアトレード商品を体験できる宿泊プランを提供しているホテルだ。レストランでフェアトレード認証のコーヒーやワインを提供するほか、フェアトレード認証コットンを使用したマスクの制作などに取り組んでいる。
また、札幌市内のフェアトレード専門店「みんたる」と協力して、フェアトレードチョコレートや、途上国で作られたポーチやアクセサリーなどのフェアトレード商品を販売している。
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ホテルJALシティ羽田 東京
オリックス・ホテルマネジメント株式会社が運営する「ホテルJALシティ羽田 東京」では、国際フェアトレード認証製品を体験できる宿泊プランを提供している。客室のバスタオル・ハンドタオル・ゲストタオルは、日本製フェアトレードコットンタオルを採用している。
また、フェアトレード食材を使用した朝食では、カカオ農家が経営するDIVINE(ディバイン)のチョコレートや、スリランカのウバ地方で栽培されたウバティーなどを味わうことができる。
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六根ゲストハウス
京都市中京区にある「六根ゲストハウス」では、フェアトレードの厳しい基準を満たした、フェアトレード石けんやフェアトレードオーガニックコットンパジャマアメニティを提供している。
また、ゲストハウス内の電気には、FIT電気と再生可能エネルギーの2種類の電源を利用。地球環境に対して負荷の少ないエネルギーの使用にも取り組んでいる。
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横浜ロイヤルパークホテル
三菱地所グループが運営している「横浜ロイヤルパークホテル」は、 国際フェアトレード認証のワインやコーヒーを提供しているホテルだ。
その他にも、プラスチックの使用量を40%削減したエコアメニティや、100%リサイクルの再生ペットボトルを使用したミネラルウォーターの導入など、環境に配慮した多角的な取り組みを行っている。
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飲食店がフェアトレードに取り組む必要性や魅力
持続可能な社会の実現に貢献するため、フェアトレードに取り組む飲食店が増えている。飲食店がフェアトレードに取り組む必要性と、魅力をそれぞれ紹介しよう。
飲食店がフェアトレードに取り組む必要性
ここでは、なぜ飲食店がフェアトレードに取り組むことが重要なのか、その必要性について解説する。
顧客に発展途上国の労働問題について知ってもらうため
飲食店がフェアトレードに取り組む必要性の一つは、お客さまに発展途上国の労働問題について知ってもらうこと。フェアトレードメニューやアメニティなどを提供することで、お客さまが商品の背後にあるストーリーや労働者の状況を理解するきっかけになる。
持続可能な社会の実現への貢献のため
飲食業界は食品調達において大きな影響力を持っている。飲食店がフェアトレード食材を採用することで、発展途上国の生産者や労働者の生活向上に寄与することにつながり、持続可能な社会の実現に貢献できるだろう。
飲食店がフェアトレードに取り組む魅力
ここでは、飲食店がフェアトレードに取り組むメリットはなにか、その魅力について紹介する。
サステナブルな姿勢の認知につながる
飲食店がフェアトレードに取り組むことで、持続可能性や社会貢献への意識の高い人たちとの接点が生まれる。店舗のイメージ向上と共感が得られることで、長期的な顧客ロイヤルティを築くことにつながるだろう。
また、フェアトレード食材を採用していることを発信することで、食材へのこだわりや店舗のサステナブルな姿勢をお客さまにアピールできる。
メニューの差別化につながる
フェアトレード食材を使用したオリジナルメニューは、競争の激しい飲食業界において差別化のひとつの要素となる。サステナブル意識の高いお客さまは、多様な食文化や持続可能な選択肢を求めており、その要求に応えることで集客力を高められるだろう。
顧客単価アップにつながる
フェアトレード食材の多くは、オーガニック製法や手作業によって生産されているため、従来品に比べて仕入れ価格が高くなってしまう。しかし、フェアトレード食材を料理に使用することで、メニューの価値を高められるため、メニュー自体の価格を上げることが可能だ。
フェアトレード食材を使うことは、顧客単価の向上にもつながるといえる。
フェアトレード推進のために飲食店ができること
フェアトレードの推進は、地球全体の問題に大きなアプローチができる。ここでは、フェアトレードを推進するために、飲食店ができることを紹介する。
フェアトレード食材の調達
飲食店がフェアトレード推進のために、最初に考慮すべきことは、フェアトレード認証を受けた食材の調達だ。フェアトレード認証を受けた食材を積極的に調達することで、農産物生産者や労働者が公正な報酬を受け取れるよう支援し、持続可能な食品供給の実現に貢献できるだろう。
日本国内でもフェアトレード認証を受けた農産物や食材が供給されている。地元の供給者と提携することで、地域経済を支えつつフェアトレードの推進に取り組めるのだ。
フェアトレード食材の調達は、飲食店がフェアトレードに貢献する第一歩であり、お客さまに高品質かつエシカルな選択肢を提供するための基盤となるだろう。
フェアトレードに関する情報発信
飲食店がフェアトレードに取り組む際、情報発信は重要な役割を果たす。お客さまにフェアトレードの理念やその背後にある価値を発信することで、サステナブル意識の高いお客さまに知ってもらえるきっかけになり、店舗のイメージ向上にもつなげられるだろう。
たとえば、店舗のWebサイトやSNSを活用して、フェアトレードに関する情報を発信するのも一つの方法だ。
また、試食会や講演会などを通じて、フェアトレードの理念を学ぶ機会を提供するなど、フェアトレードに関するイベントやキャンペーンを定期的に開催することで、新たなお客さまとの接点ができるだろう。
飲食店がフェアトレードに関する情報を発信することは、持続可能な食品供給に対する顧客の関心を高め、フェアトレードの普及と支持を促進する上で欠かせない取り組みだ。
フェアトレードに関する社内セミナーの実施
飲食店のスタッフに対して、フェアトレードについての社内セミナーを実施するなど、教育を行うことも重要である。たとえば、メニューに含まれるフェアトレード食材について、スタッフが説明できるようにトレーニングすることだ。
一人一人のスタッフがフェアトレードの理念を理解し、お客さまに対してお店のフェアトレード食材へのこだわりや発展途上国への支援の気持ちを伝えられるようにすることで、顧客満足度の向上につながるはずだ。
フェアトレードを推進して食の未来を守ろう
フェアトレードの考え方は、私たちの食と密接につながっている。飲食店やホテルがフェアトレードに取り組むことは、持続可能な社会を築くための一助となるだろう。
また、フェアトレードに取り組むことで、お店のサステナビリティの実現に一歩近づくうえ、他店との差別化を図ることもできそうだ。
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