“エシカル”なチョコレートが話題。バレンタインを前に知っておきたいサステナビリティとは?

新型コロナの影響を受け、消費者のライフスタイルや価値観が大きく変化するなかで「エシカル消費」への関心が高まっている。エシカルとは、日本語で「倫理的な」「道徳上の」という意味で、人や社会、環境に配慮した消費活動のことを「エシカル消費」という。SDGsの12番目の目標「つくる責任 つかう責任」に深く関連する取り組みだ。

2021年3月の調査では、新型コロナの影響で、30.9%の人が「エシカル消費への意識が高まった」と回答している。また、チョコレート専門店を展開する「株式会社Bace」が2021年のバレンタイン前に行った調査では、「一般的なチョコレートと比べて高価でも、途上国の農家に技術や環境整備の支援を行い、さらにフェアトレードで買い付けをされたカカオ豆で作られたチョコレートを欲しいと思いますか?」という質問に58.7%の人が「欲しい」と回答。「美味しさ次第では欲しい」と回答した37.0%と合わせると、95.7%もの人がエシカルなチョコレートに興味を持っていることが明らかになっている。

児童労働や環境破壊…チョコレートをめぐる問題とは?

こうした「エシカルなチョコレート」の需要拡大の背景には、消費者によるチョコレートをめぐる様々な環境・社会問題に対する危機意識が関係している。

チョコレートの原料となるカカオ産地の農業世帯では、約45%もの子どもたちが児童労働に従事。児童労働とは、15歳未満の子どもの義務教育を妨げる労働や18歳未満の子どもによる危険有害労働を指し、国際条約や各国の法律で禁止されている。

また、カカオ栽培にかかる労力の68%を女性が負担しているにもかかわらず、わずか21%の収入しか得られない、といったジェンダー間の格差もある。カカオ生産地についても、その拡大によって2019年~2021年の3年間にカカオ主要産地の5.9万ha(東京23区相当)の森林が消失しており、将来的にこうした主要産地でカカオが生産できなくなる可能性が指摘されている。

砂糖の生産地であるアジアや中南米、アフリカでは今なお収穫や除草作業などで児童労働が発生している。熾烈な価格競争の影響で取引価格が低くなりすぎると、生産コストを抑えるために労働に駆り出されるのは、幼い子どもたちだ。毒ヘビが潜む農園で刃物を持ち一日中働いても、彼らに支払われる賃金は週に1ドルほどだという。他にも砂糖の大規模生産に伴う森林破壊や住民生活への影響、生物多様性への影響、農薬による健康被害などさまざまな環境・社会課題があるといわれている。

こうしたチョコレートをめぐる問題が徐々に消費者の知るところとなり、近年では「フェアトレード」をはじめ、オーガニックや国産のカカオを使用したチョコレートを店頭で見かけることも多くなってきた。

世界的ハイブランドが「フェアトレード認証」チョコレートを発表

2023年1月11日には、高級宝飾品ブランド「ブルガリ」がSDGsをテーマにしたチョコレートを発表した。今回発売された「サン・ヴァレンティーノ 2023」は、SDGsの17の目標を4つのフレーバーで表現。4つのフレーバーのうち「アーモンドプラリネ」チョコレートは、ラグジュアリーブランドとして世界で初めて「国際フェアトレード認証」を取得している。フェアトレードの他にも、食品ロス削減や地産地消の推進、自然農法による栽培など、様々なサステナビリティが盛り込まれている。

また、認定NPO法人「フェアトレード・ラベル・ジャパン」をはじめとする、SDGsに積極的なビジネスパートナーや生産者たちとパートナーシップを組むことで、SDGsの17番目の目標「パートナーシップで目標を達成しよう」も実現。

フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長・潮崎真惟子氏は、プレスリリースのなかで「ブルガリの取組みの社会的インパクトは大きく、新たな素晴らしい取組みに敬意を表します。また途上国の生産者の努力によりフェアトレード原料の品質が非常に高いことが、今回の原料採用に結び付いたとも思い嬉しく思います。近年の日本におけるフェアトレードの急速な拡大がさらに加速することに期待します。」とコメントしている。

有名ショコラティエ、「チャイルドレイバーフリーカカオ」を使用


また、有名ショコラティエ・三枝俊介によるチョコレート専門ブランド「ショコラティエ パレ ド オール」では、2023年1月29日からガーナ産「チャイルドレイバーフリーカカオ」を使用した2種類のチョコレートケーキを発売。

チャイルドレイバーフリーカカオは、認定NPO法人「ACE(エース)」がガーナのカカオ生産地で児童労働をなくすためのプロジェクトを実施した地域で収穫された、国際フェアトレード認証カカオだ。ACEがプロジェクトを実施した村では、地元住民が地域に児童労働がないことを継続的にモニタリングする仕組みを作っている。

今回、販売される「ザッハトルテ ガーナ」と「ガトー パレドオール」の売り上げの一部は、ガーナのカカオ農家への支援金として寄付される。

全国5店舗とオンラインショップを展開する「ショコラティエ パレ ド オール」では、カカオ豆の選別、焙煎から全ての工程を自社で手掛けており、その工房で生み出される商品は、インターナショナルチョコレートアワードアジア大会やワールド大会、さらにイギリスのアカデミーオブチョコレートでも多数受賞している。

「カカオ・トレース認証」チョコを、ホテルのデザートビュッフェに

「世界一の朝食」で知られるオーベルジュ「神戸北野ホテル」では、カカオ生産者へ還元されるカカオ・トレース認証のチョコレート「ピュラトス」を使ったなめらかな「ムースショコラ」とそのままの味わいを楽しめる「タブレット」を、ナイトデザートブッフェのメニューとして提供。

「カカオ・トレース」は、未来のチョコレートを守るため生産者への技術支援と品質向上を目的としてスタートしたサステナブル・プログラム。カカオ生産者への栽培技術支援を通じて、生産者の収入や生活水準の向上・自立支援を長期的にサポート。良質なカカオの生産と加工によりチョコレートの風味向上、品質の安定も図っている。また、チョコレート代金の一部をカカオ生産者に還元し、生産者を支援。現在、ベトナムやコートジボワール、フィリピン、パプワニューギニアなど、その活動地域を広げている。

バレンタインを前に、発信力のある有名ブランドや人物、ホテルなどが社会・環境問題に配慮されたチョコレートを採用し、発信することで今後ますます「エシカル」なチョコレートの認知度が高まるだろう。飲食店でも、チョコレートはデザートやドリンクなど日常的に使用する食材だ。サステナビリティに対して関心の高いお客さまにとって、飲食店がどのようなチョコレートを使用しているか、気になるところなのではないだろうか。

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【参照サイト】 特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン:ブルガリ イル・チョコラート サン・ヴァレンティーノ2023「アーモンドプラリネ」がラグジュアリーブランドとして世界初となる国際フェアトレード認証ライセンスを取得
【参照サイト】 ブルガリ イル・チョコラート サン・ヴァレンティーノ2023 1月12日(木)より限定発売
【参照サイト】 ショコラティエ パレ ド オール:バレンタインも、SDGs!美味しく食べて、チャイルドレイバーフリー(児童労働のない)カカオの支援に貢献
【参照サイト】【神戸北野ホテル】 2020年3月2日(月)~4月30日(木)甘酸っぱい香りに包まれながらパーティー気分 ナイトデザートブッフェ ~Tower of Berries~
【参照サイト】 チョコレート業界初のプログラム「カカオ・トレース」認証マークを取得!

table source 編集部
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