SDGsとESGの違いをわかりやすく解説!飲食店が取り組むべき活動や注意点も紹介

ESG

企業としてSDGsに取り組もうとしているなかで、ESGとの違いがわからず混乱している飲食店関係者はいないだろうか。長期的な経営目標を作りたい場合は、SDGsとESGの違いを明確にすることが大切だ。

SDGsとESGは、企業が社会貢献を意識していくための指標となる言葉である。SDGsが世界共通のゴールである一方、ESGは企業が実践できるプロセスの意味で使われる。

この記事では、SDGsとESGの違いをわかりやすく解説し、それぞれのメリットや注意点についても触れていく。SDGsとESGの違いを理解することによって、飲食店が起こすべきアクションを適切に導き出せる。

SDGsとESGの違いをわかりやすく解説

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SDGsとESGは、ともに社会問題の解決をおこなうために作られた言葉である。それぞれの違いを理解し、飲食店としてどのような行動をしていくべきかを紐解いていこう。

SDGs:世界で定めた社会問題を解決するゴール

SDGsとは、世界で起きている社会問題の解消に向け、国連が主体で定めたゴールのことである。貧困や気候変動への対策などが17項目にわかれており、それぞれ2030年までに解決することが世界共通の目標だ。

近年の日本でも、政府を中心にSDGsの推進が続いている。2023年には、化石燃料からクリーンエネルギー活用へとシフトする「グリーントランスフォーメーション(GX)」実現に向けた方針が掲げられた。

なお、SDGsと同じような場面でよく使用される「サステナビリティ(持続可能性)」は、社会問題を長期的に考えるという意味では同じだが、期限が定められていない点に違いがある。

ESG:SDGsを達成するために企業がおこなうプロセス

ESGは、企業が主体で社会問題を解決するために作られた言葉だ。具体的には、SDGsの達成へ向けて企業それぞれがおこなうプロセスの意味で使われる。

ESGは、以下の3つの活動を指標としている。

  • Environment(環境):自然災害や温暖化などの環境問題解決
  • Social(社会):働き方改革やジェンダー支援
  • Governance(ガバナンス):企業の不正防止や情報開示

近年では、投資判断にESGへの積極性を加える「ESG投資」が広がっている。社会問題の解決へ向け動き出す企業は、健全な活動が持続されると判断でき、長期的なリターンが期待できるためだ。

ESGに配慮すれば、従業員が働き続けたいと思う労働環境を作れるだけでなく、投資家からも選ばれる企業になるだろう。

企業がSDGs・ESGに取り組むメリット

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企業がSDGs・ESGへの取り組みをすれば、労働環境の改善や利益向上などが見込める。飲食店としても、食をテーマにしながら、社会的意義のある活動の継続が期待できるだろう。

企業の価値を向上できる

近年では、投資判断の指標である財務情報だけではなく、「非財務情報」が企業の評価を高めている。非財務情報には、主に以下のような項目が含まれる。

  • サステナビリティへの取り組み姿勢
  • 社員全体による情報資産の管理体制
  • 経営理念・経営ビジョン
  • 無形資産(ブランド・特許など)の保有状況

こうした非財務情報を開示することは、企業の信頼性や透明性、サステナビリティ(持続可能性)の強化として重要な手段だ。日本では2023年度から、上場企業による非財務情報の開示が義務付けられている。

企業の価値が向上すれば、非財務情報に注目する投資家から資金を集めやすくなり、経営の安定にもつながる。飲食店としても、サステナブルな取り組みを発信することで、お店の価値向上につなげたいところだ。

新たな商品やサービスを生むきっかけを作る

SDGsの目標を達成するためには、環境負荷のかからない商品やサービスの開発など、革新的な活動が必要だ。飲食店としての新しい事業を考えるときには、SDGsへの貢献を軸にしてみると、いままでにないアイデアを打ち出せる可能性がある。

実際に、近年では店舗から食品ロスが出そうなときに、アプリ通知をして購入を呼びかけるサービスなど、飲食店の食品ロス削減を目的とした新たなサービスが開発されている。

SDGs達成に向けた商品や新サービスを生み出せば、社会からの注目も受けやすくなり、拡販が期待できるだろう。

取引先に選ばれやすくなる

企業のなかには、世の中に社会貢献性をアピールするため、取引先を厳選しているところがある。たとえば、環境配慮への取り組みに積極的な取引先のみを、製品の供給の流れである「サプライチェーン」に組み込む方針を定めているケースだ。

環境配慮への取り組みをしていないと、将来的に提携企業として選ばれなくなる可能性がある。持続的な運営を続けていくためにも、ESGへの取り組み姿勢を見せていくのは一つの手段といえる。

従業員が働きやすい環境を作れる

ESGのなかには、環境への配慮だけでなく働き方改革やジェンダー問題の解決などが含まれる。ESGを意識した取り組みを実施することで、従業員の満足度が向上するだけでなく、長く働ける企業づくりが可能だ。

ほか、投資家や取引先に向けて、適切な情報開示と不正防止などの取り組みをしているアピールができるだろう。さらに、健全な経営体制の実現で優秀な人材が定着し、企業の成長促進も期待できる。

企業がSDGs・ESGに取り組むときの注意点

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企業がSDGs・ESGに取り組みたいと考えても、運営資金の関係などで、いますぐ実行できないケースがある。これからSDGs・ESGを意識した組織体制へ変えていくためにも、注意点について理解しておくことが大切だ。

短期的な利益が見込めない

SDGs・ESGを軸にした取り組みは、すぐに利益が出るものではない。環境配慮などの長期的な取り組みのなかで効果が期待できるものが多いためだ。

とくに、働き方改革などの人的な取り組みに関しては、直近での利益アップの効果を感じにくい。企業運営を長い目で考えながら、投資家や取引先をはじめとして、少しずつ世の中から信頼を得ていくという考え方が重要である。

大企業の取り組みに注目が集まりやすい

大企業は、資金力を活用してSDGs達成に向けたESGの取り組みをおこなっている。Webサイトでも、主に投資家へ向けてESGへの対策事例をPRしており、中小企業と比較して注目が集まりやすい。

とはいえ、中小企業やスタートアップにおいても、社会問題解決の取り組みをアピールするメリットはある。たとえば、世の中にない画期的な商品やサービスを生み出せば、投資家からの注目が集まり、資金調達力が向上する可能性がある。

資金力が必要なケースがある

ESGに沿って企業の形態を変えていくと、資金が必要になる場合がある。たとえば、従業員満足度を上げるための新たな福利厚生や設備投資のためのコストなどだ。また、サステナブルな新商品やサービスを検討する過程でも、開発費が発生する。まずは、小さな規模の取り組みから始めていくことで、経営リスクを抑えられるだろう。

グリーンウォッシュと誤解されないように

グリーンウォッシュ(グリーンウォッシング)とは、「実態とは伴わない取り組みにもかかわらず、環境に配慮していると見せかける」マーケティング手法のこと。

たとえ意図的ではなくても、実態が伴わないままESGの取り組みを発信してしまうと、消費者にグリーンウォッシュとみなされてしまう場合がある。一度誤解されてしまうと、取り組みが失敗に終わるばかりか、企業やブランドのイメージを大きく損なう可能性があり、なかには訴訟に発展する場合もある。

グリーンウォッシュだと誤解されないためには、具体的な目的や成果を公開したり、第三者機関の認証を得るといったポイントを押さえておくことが必要だ。
【関連記事】 グリーンウォッシュと誤解されないためには?押さえておきたい5つのポイント

飲食店がおこなえるSDGs・ESGの取り組み

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世の中で起こっている環境・社会問題のなかには、食品ロスをはじめとして、飲食店に関係のあるものも多い。それぞれの店舗ができることを探すためにも、飲食店がおこなえるSDGs・ESGの取り組みを紹介する。

食品ロスを削減する

農林水産省が出した統計によると、2021年の日本全体の食品ロス量は524万トンだった。そのなかで、外食産業の食品ロス量は80万トンにおよんでいる。

食品ロス解決のためには、飲食店それぞれが、食材を無駄にしない対策を実践し続けることが大切だ。食べ残し防止の対策や、地産地消の食材導入など、比較的大きな予算をかけずにできることから取り組んでいくべきである。

【関連記事】 飲食店が実践したい、世界の食品ロス削減アイデア8選

エシカルな商品を選択する

エシカルとは、日本語で「倫理的な」「道徳上の」という意味。つまり多くの人が考える社会的な手本となる良識的な考え方や行動のことで、法的な縛りのない社会的規範のことだ。たとえば、発展途上国で働く生産者へ適正な代金が支払われる「フェアトレード商品」は、エシカルな商品に該当する。コーヒーやチョコレートなどがフェアトレード食材の代表例だ。

【関連記事】 フェアトレードに対応しているレストランの魅力とは?持続可能な食文化への取り組みを紹介

食材以外でも、再生可能なテーブルクロスなど資源の循環を意識した商品を選ぶのもおすすめだ。店舗備品で新規購入やリニューアルするものがあるときは、こうしたエシカルな商品の選択を視野に入れるといいだろう。

【関連記事】自社廃棄を再生し、“テーブルクロスの循環“を実現。新ブランド「eterble」がリリース

従業員が働きやすい環境を作る

従業員が働きやすい労働環境を整備することで、採用の活性化により人員不足の解消につながる。さらに、優秀な人材が定着するため、より安定的な経営や店舗の拡大なども見込めるだろう。

従業員満足につながる活動には、透明性のある人事評価やハラスメント対策、スキルアップ研修の実施などが挙げられる。飲食店としては、積極的にメニュー開発に関われる環境を作るなど、従業員のモチベーションを保ちつつ前向きに働くための工夫が大切だ。

飲食店によるSDGs・ESGの取り組み事例

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SDGs・ESGは、飲食店を経営する多くの企業で採用されている取り組みである。自身の店舗でなにができるのかを考えていくためにも、飲食店によるSDGs・ESGの取り組み事例をみていこう。

株式会社モスフードサービス

モスバーガーを運営している株式会社モスフードサービスは、SDGsの達成へ向けた商品開発をおこなっている企業だ。実際に、牛や豚などの動物性食材を使わず、野菜と穀物を使った「グリーンバーガー」が発売されている。

また、注文を受けてから商品を作り始める「アフターオーダー方式」を採用しており、食品ロス削減への意識が強い。テイクアウトにおいても、リサイクルが可能なサラダ容器などを提供し、環境配慮への推進がおこなわれている。

【関連記事】 顧客満足度1位のモスバーガー、非食用国産米を配合したバイオマス製カトラリーを導入

株式会社アトム

株式会社アトムは、ステーキ宮やカルビ大将などの飲食店を経営している企業である。アトムでは、飲食店内の照明や水道などの設備を省エネ化し、資源の保護に取り組んでいる。

また、従業員が快適に働き続けるための制度として「地域限定正社員制度」を推進しているのが特徴だ。地域限定正社員制度とは、働く地域を限定した従業員を採用する制度であり、地元で働き続けたい人のニーズに応えられるメリットがある。

SDGs・ESGの違いを理解しできることから始めよう

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SDGsは、社会問題の解決に向けた世界共通のゴールのことである。一方で、ESGは、SDGsを達成するために企業がおこなうプロセスのことだ。

SDGs・ESGの違いを理解することで、投資家や顧客に対し、企業としての適切なアピールができる。とはいえ、社会問題解決への取り組みは、長期的な運営をしなければ、成果につながりにくいのが現状だ。

また、消費者意識の高まりとともに、取り組みへの視線も厳しいものになっていく。本文の中でも触れたように、せっかくの取り組みをグリーンウォッシュと誤解されないように気をつけることも大切だ。あくまでも社会問題に真剣に向き合うこと自体が重要だということを覚えておきたい。
【関連記事】 グリーンウォッシュと誤解されないためには?押さえておきたい5つのポイント

これからSDGs・ESGを意識していきたい飲食店は、食品ロス削減に向けた体制強化などひとつひとつ直実にできることから始めてみよう。

【関連記事】

飲食店が実践したい、世界の食品ロス削減アイデア8選

【参照サイト】 外務省 SDGsとは?
【参照サイト】 内閣府 ESGの概要
【参照サイト】 農林水産省 食品ロスとは

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