
サーキュラーエコノミーは、現代社会において持続可能な未来を築くための重要な概念として注目されている。
従来の、大量消費や廃棄をする直線的なリニアエコノミーを続けていては、資源の枯渇や環境負荷が深刻化して、未来に不安を抱くことになる。世界の潮流はリニアエコノミーから、持続可能な状態で資源を循環させるサーキュラーエコノミー経済への移行を目指している。
この記事では、サーキュラーエコノミーの意味や原則、ビジネスモデル、実現のためにできる取り組みについて詳しく解説する。さらに、環境負荷の軽減、経済的なメリット、持続可能な社会の構築など、サーキュラーエコノミーがもたらす様々なメリットについても紹介したい。
サーキュラーエコノミーの意味
サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、資源を有効活用し、廃棄物を最小限に抑え循環させる経済モデルである。
これに対して、リニアエコノミー(線型経済)は、大量に資源を採取し、製品を作り、使用後に廃棄物として捨てる従来の経済モデルのこと。現在、世界ではリニアエコノミーから、サーキュラーエコノミーの経済へ移行を目指すことが潮流となっている。
それぞれの経済モデルについて詳しく紹介する。
リニアエコノミー(線型経済)
リニアエコノミーとは、資源の有限性を考慮せず、一度使ったら廃棄物として捨てる経済モデルのこと。
資源の採取、製品の製造、使用後の廃棄物処理といったプロセスは、一方向の直線的な流れとなっており、廃棄物の処理には多くのエネルギーやコストがかかることになる。こうした直線型の経済モデルでは、天然資源が枯渇し、環境への負荷が増大してしまうといわれている。
サーキュラーエコノミー(循環型経済)
サーキュラーエコノミーは、資源の循環と再利用を重視した経済モデルだ。資源を有効活用するために、廃棄物を再生して、持続可能な状態で循環させることを目的にしている。具体的には、製品のデザインから廃棄物の処理までの一連のプロセスを見直し、リデュース(削減)、リユース(再使用)、リサイクル(再資源化)などの取り組みを行う。
資源の循環を促進することで、環境への負荷を軽減し、持続可能な社会の実現を目指すのがサーキュラーエコノミーである。
サーキュラーエコノミーの3原則
イギリスのエレンマッカーサー財団が掲げる、サーキュラーエコノミーの3原則では、以下の内容を重要としている。
- 廃棄物・汚染などを出さない設計
- 製品や資源を使い続ける
- 自然のシステムを再生する
「廃棄物・汚染などを出さない設計」の実現には、製品の設計段階から廃棄物の排出を最小化することが重要だ。「製品や資源を使い続ける」ことを実現するためには、製品の寿命を延ばし、その価値や機能を最大限に引き出すことが重要視されている。「自然のシステムを再生する」ことを実現するためには、自然環境の保護と回復が重要な要素だ。
3R(リデュース・リユース・リサイクル)との違い
サーキュラーエコノミーに対して、「3R」は(Reduce/リデュース、Reuse/リユース、Recycle/リサイクル)循環型社会を形成するための取り組みだ。3Rは廃棄を前提としているのに対して、サーキュラーエコノミーは廃棄物の最小化と資源の循環を、総合的に考える経済モデルとしてアプローチしている。
サーキュラーエコノミーは製品やサービスの設計段階から廃棄物を出さないようにデザインしていることが、3Rとの違いだ。
また、サーキュラーエコノミーは、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の達成に貢献する重要な要素だ。特に、以下のSDGsとの関係が深い。
- SDGs12「つくる責任つかう責任」
- SDGs13「気候変動に具体的な対策を」
- SDGs15「陸の豊かさも守ろう」
サーキュラーエコノミーにおける資源の有効活用と廃棄物の最小化は、SDGs12とSDGs15に関係している。持続可能な生産と消費を促進する点でSDGs12「つくる責任つかう責任」に、森林や土壌の生態系保護と回復に寄与する点ではSDGs15「陸の豊かさも守ろう」につながる。また、二酸化炭素の排出量削減や資源の循環により、気候変動の対策に貢献する点と関係するのは、SDGs13「気候変動に具体的な対策を」だ。
サーキュラーエコノミーは持続可能な社会の実現を目指すために、SDGsの掲げる目標が関わっている。
サーキュラーエコノミーが注目されている理由
環境負荷を軽減できるから
まず、サーキュラーエコノミーが注目される要因の一つとしてあげられるのが「資源の循環による環境負荷の軽減」だ。
従来のリニアエコノミーでは、資源の過剰な使用や廃棄物の処理によって自然環境への負荷が増大した。しかし、サーキュラーエコノミーでは、資源の採掘をはじめ、製造に必要なエネルギーや水の使用量を減らし、廃棄物や環境汚染の削減に貢献できる。
経済的なメリットがあるから
サーキュラーエコノミーは資源の循環と再利用によって、原料やエネルギーの使用量が削減され、コストの節約ができるという経済的なメリットがある。
廃棄物処理にかかるコストやリスクも軽減されるうえ、新たなビジネス機会や雇用の創出を促し、経済の活性化にも寄与することができる。
持続可能な社会を構築できるから
サーキュラーエコノミーのような循環型のビジネスモデルが普及することで、社会全体の意識や行動が変化し、より持続可能な社会の構築につながることが期待されている。
サーキュラーエコノミーのビジネスモデル
サーキュラーエコノミーは、製品を売り切るビジネスモデルから、新たなサービスのビジネスモデルへと拡張できる。主なビジネスモデルを3つ紹介しよう。
リユース(再使用)
リユースは、製品や部品を一度使用した後も再利用することを重視するビジネスモデルである。製品の寿命を延ばすために修理やメンテナンスを行い、使用価値が残る限り商品として再び市場に供給することが主な目的だ。
リユースのビジネスモデルは、製品の持続的な価値を引き出し、資源の廃棄を抑制する効果がある。
【関連記事】 倉庫に眠っていた古い食器をカラーリングで再生。ホテル内レストランの朝食で使用へ
リサイクル(再製造)
リサイクルは、製品や部品を回収し、原材料として再利用するビジネスモデルだ。回収した物を選別・分別し、リサイクル工程を経て新たな製品や材料を再製造する。
たとえば、プラスチックや紙のリサイクルは、資源の枯渇を防ぎ、廃棄物の処理負荷を軽減するだけでなく、サプライチェーンの持続可能性を高めることにも貢献できるだろう。
【関連記事】 世界初、捨てられる食器から生まれた肥料「BONEARTH」。洋食器の老舗ニッコーが商品化
シェアリング(共有)
シェアリングは、製品やサービスを複数のユーザーで共有するビジネスモデルだ。たとえば、自動車や自転車のシェアリングサービスでは、複数の人が同じ製品やサービスを共有し、必要なときに利用する。共有することで、利用時間や資源使用量の最適化が可能となるだろう。
シェアリングは、所有から共有へのパラダイムシフトを促し、消費者のライフスタイルの変化を反映したビジネスモデルである。
【関連記事】 食器から自家農園まで。ホテルや飲食店に導入できるサステナブルなサブスク7選を紹介
サーキュラーエコノミー実現のためにできる取り組み
サーキュラーエコノミーの実現のために企業が取り組めること、個人ができる取り組みをそれぞれ紹介しよう。
企業ができる取り組み
循環型の製品デザインを設計・選択する
ものづくりに関わる企業の場合、製品のデザイン段階から、リサイクルやリユースを考慮した設計を行うことが重要だ。資源の有効活用や廃棄物の再利用を考慮した設計を行うことで、サーキュラーエコノミーの実現に貢献できる。たとえば、製品の分解や部品の交換が容易な設計や、再生可能な素材の利用などに取り組めるだろう。
製造業以外の企業では、調達の際にリサイクルやリユースを考慮した商品を選ぶことでサーキュラーエコノミーの実現を後押しすることができる。
取引先と協力関係を築く
一企業としてだけでなく、仕入れ先や販売先との協力関係を築きながら、サプライチェーン全体での循環型経済を推進することも重要だ。
廃棄物の発生源から製品の再利用までの一連のプロセスを共有し、資源の循環を促進する取り組みが求められる。共同でリサイクルプログラムを立ち上げたり、リユースやリサイクルのノウハウを共有したりするなどの具体的な取り組みができるだろう。
個人ができる取り組み
エネルギーと水の節約をする
個人がそれぞれの日常生活でエネルギーや水の節約に取り組むのも資源の節約につながる。たとえば、電気や水道の使用量を減らすために節水・節電を心がけることや、省エネ家電や節水器具の利用などができる。エネルギーと水の節約は、資源の有効活用と環境負荷の軽減につながるはずだ。
【関連記事】 高騰する光熱費もCO2排出量も削減。飲食店が取り組みたい「省エネ」アクションとは
フリマアプリやリサイクルショップを活用する
不要な物品や衣類をフリマアプリやリサイクルショップなどで販売や寄付することで、廃棄物を減らす取り組みができる。
また、中古品の購入やリースサービスの利用も、製品の再利用を促すための有効な手段だ。自身の不要な物品を再利用することで、資源の節約と廃棄物の削減に貢献できるだろう。
サーキュラーエコノミーはサステナブルな社会を築く
サステナブルな社会の実現に向けて、重要な役割を果たすといえる「サーキュラーエコノミー」。環境負荷の軽減や経済的なメリットの提供、持続可能なビジネスモデルの創出など、さまざまな側面で注目されている。
まずは、できることから少しずつでも取り組みを行い、資源の循環を促進することで、地球環境の保全と持続可能な社会の実現に貢献していきたい。
【関連記事】
【参照サイト】 経済産業省:循環型の事業活動の類型について
【参照サイト】 参考:環境省 「第2節 循環経済への移行」
【参照サイト】 経済産業省:循環経済ビジョン2020(概要)
【参照サイト】 環境省:サーキュラー・エコノミーに係る サステナブル・ファイナンス促進のための 開示・対話ガイダンス