農林水産省によると国内の食料自給率は、自給率の高い米の消費が減少し、飼料や原料を海外に依存している畜産物や油脂類の消費量が増えてきたことから、長期的に低下傾向で推移している。令和元年度のカロリーベースでは食料自給率が38%と他の先進国と比べて非常に低い。残りの62%を輸入に頼るということは、輸入先の情勢が不安定になったり、自然災害によって供給が困難になったりすると国際価格が高騰するというリスクがある。最悪のケースでは飢饉に直面する可能性もある。そうした中、注目が高まっているのが地産地消だ。
地産地消とは国内の地域で生産された農作物や水産物を、生産された地域内において消費する取り組みのことだ。食料自給率の向上に加え、直売所や加工の取組などを通じて、6次産業化にもつながる。飲食店は、その土地で採れた野菜を使用することで新鮮な状態で料理を提供することができる。洋食器メーカーのニッコー株式会社の2020年の調査によると「食材の産地や安全性も意識するか」というアンケートに対して半数以上が「意識する」と回答しており、地産地消に対する消費者の意識も高いことがうかがえる。そこで今回は、飲食店が知っておきたい地産地消のメリットとデメリットを紹介したい。
メリット-1.輸送におけるCO2の削減
近くで採れる食材であれば輸送時のCO2排出が少なく済み、環境への負荷が抑えられる。近年、気候変動の問題解決の手段として各分野でカーボンニュートラル化が課題となっている。食料品においても生産に伴うCO2排出量をパッケージに表示するカーボンラベルを導入するケースが増えてきており、関心が高まっているといえる。イギリスのカーボントラスト社などは、早くから食品や飲料品にカーボンラベルを表示している。また、食材を新鮮なうちに提供すれば冷蔵・冷凍など長期間品質を保つための電気エネルギーを削減できる。
メリット-2.食品ロス削減
普段から生産者と直接会っていれば信頼関係が築きやすい。野菜の総生産量のうち、30-40%が見た目が良くなかったり不揃いであったりといった規格外野菜と言われているが、生産者の顔が見える商品であれば、規格外のものも抵抗が少なくなり、安心して食べられる。また、生産者に直接ニーズを伝えることで、効率的な生産や品質改善が可能となり、根本的な食品ロスの削減にもつながる。
メリット-3.コスト削減による顧客満足度の向上
地域の農産物や水産物を使用することで、フードマイレージといわれる輸送コストをカットすることができる。また、電気エネルギーの削減や食品ロスの削減も店舗全体のコストダウンに影響するため、その分の費用をサービスや備品に充てることで、お店の満足度向上にもつなげることが可能だ。地産地消を実現することで地域内に資金が循環し、農家の保護や地域経済に大きく貢献する。
メリット-4.地域とつながる機会
生産者と直接関わることで食材への関心が高まり、品質向上のための具体的な要望を伝えることができるようになる。また、最近では、自家農園を持つレストランも増えてきた。実際に自分で野菜を育てるからこそできるこだわりなどがお店の売りになり、顧客とのコミュニケーション向上にもつながる。自家農園にコンポストを導入することで、食品ロスを減らしながら食材のサイクルまで学ぶこともできる。
デメリット-1.安定供給の難しさ
地元産にこだわるがゆえに欲しい食材が手に入らなかったり、天候などによって高騰したりというデメリットもある。しかし、普段から生産者とコミュ二ケーションが取れていれば、代替え提案もあるかもしれない。そのためにも、信頼関係を築いておくことは重要だ。また、顧客に対して地産地消の店というイメージが根付いていれば、メニューの変動にも寛容かもしれない。安定供給が難しいからこそ、シェフのクリエイティビティが発揮される。
デメリット-2.地域による差
気候や地形によっては、生産できる農産物が限られる地域がある。そのような土地で厳密に地場の農産物だけですべての品揃えをまかなおうとするのは非常に難しい。この場合、地産地消を地場農産物や地元の範囲のみを対象とするのではなく、国産品を優先的に使用するといった広い意味で捉えることも必要だ。小規模農家との直接の取引だけでなく、中央卸売市場をうまく取り入れるのも良いだろう。
まとめ
安全・安心な食材を使用していることがお店の売りになったり、地方であれば特色がアピールできたりと地産地消にはメリットがたくさんある。生産者と飲食店をつなぐアプリなどもあるので、地域の生産者を探して地産地消にトライすることもおすすめだ。
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【参照サイト】地産地消とは|農林水産省
【参照サイト】食料自給率・食料自給力について|農林水産省
【関連サイト】生産者とシェフを直接つなげる仕入れアプリ「フレマル」